近年の新築住宅では、屋根・外壁に従来型の素材よりも「金属系外装材」が選ばれることが多くなっているようです。
今回は、現代の金属系外装材の代表格「ガルバリウム鋼板」についてご紹介します。
ガルバリウム鋼板とは? 材質を知る
「ガルバリウム鋼板」は、「鋼をアルミニウムと亜鉛の合金でメッキ加工したもの」を指します。
これでは少しわかりにくいのでまずは「鋼」からご説明しましょう。
鋼とは「微量(0.02〜2%程度)の炭素を含んだ鉄」のことです。
実は純度100%の鉄よりも、鋼のように微量の炭素を含んだほうが鉄は硬く、強くなるのです。
鋼という物質には錆びやすいという弱点があるのですが、ガルバリウム鋼板はその弱点をアルミニウムと亜鉛の合金を使用したメッキ加工で補っています。
ガルバリウムという名称は、この素材の特徴を担う二つの原料、亜鉛(galvanize)とアルミニウム(aluminium)を掛け合わせた造語のようです。
屋根材、外壁材として使うガルバリウムの特徴
ガルバリウム鋼板の屋根・外壁材としてのメリット
軽量で強い
鋼鉄の強靭さにサビにくさをプラスし、しかも従来のトタンの3〜5倍の強度を持つガルバリウムは、厚さ1mm以下の薄さにしても建材として十分な強度を持っているため、外壁材・屋根材として非常に人気です。
金属ではあるものの薄く引き伸ばして利用するガルバリウムは、外壁材として一般的な窯業系サイディング、屋根材として一般的な瓦類と比べても軽量、かつ十分な強度があるため、高い耐震性能を期待できます。
モダンなデザイン性
ガルバリウムは、金属系外装材特有の都会的でモダンなデザイン性も人気の要因です。
特に若い世代の建てる住宅にはガルバリウムが採用されることが多いようです。
ガルバリウム鋼板の屋根・外壁材としてのデメリット
傷が入ればサビやすくなる
ガルバリウムは基本的にサビに強い素材ですが、メッキ加工された表面に傷が入るとやはりサビが発生する可能性は高まります。
施工時には十分注意して取り付ける必要がありますし、施工後も表面に傷がつかないよう注意するようにしましょう。
デザインのバリエーションは少なめ
窯業系サイディングと比べると、今のところガルバリウム鋼板のデザインのバリエーションは少ないというデメリットもあります。
とはいえ、人気の高い素材ですから今後はより豊富なデザインのガルバリウム建材が登場することを期待できるでしょう。
ガルバリウム鋼板で人気の色・デザインは?
ガルバリウム鋼板の色選びにこだわれば、外壁はさらに魅力的でオリジナリティのあるものになります。
ガルバリウムの中でも人気のある色をご紹介します。
ブラック・ダークグレー系
ガルバリウムの外壁の中でも圧倒的な人気を博しているカラーがブラックです。
ブラックは
などをイメージさせる色で、黒いガルバリウムの建物の落ち着きのあるシックさ、クールな佇まいを見ていると、人気があるのもうなずけます。
ただし、黒い外壁には、
- 日照で屋内が暑くなりやすい
- 汚れが目立ちやすい
- 全体が真っ黒だと、周囲に不安感・拒絶的なイメージを抱かせることもある
といったデメリットもあります。
そこで、
など、ナチュラルさを加味する方法で、ブラックのデメリットを抑えてみるのはいかがでしょうか?
植栽があればイメージが柔らかく、フレンドリーになりますし、外壁に当たる日照を低減させ、屋内を過ごしやすくすることができます。
シルバー系
シルバーもガルバリウム外壁の人気色の一つです。
シルバーは、
などをイメージさせる色で、黒やダークグレーのように外壁の汚れが目立つこともありません。
しかしシルバーの外壁には、
- 日光の反射が“周囲に対する眩しさ”という光害の原因になりかねない
- 冷たく、無機質な印象を与えることがある
といったデメリットもあります。
シルバーを採用したい場合には、
なども十分に考慮して計画するとよいでしょう。
また、シルバー系の中でも「銀黒」や「シルバーゴールド」などのカラーであれば、周囲との調和が計りやすくなるかもしれません。
ブルー系
空や海などの清々しさを連想させるブルー系統の色は、
などをイメージさせる色で、エクステリアに限らずどんな分野でも安定した人気を誇る色です。
ブルーはアースカラー(自然の中に多く存在する色)で、大抵どんな色ともマッチするという点も、人気の理由かもしれません。
ブルーは万能な色で、ガルバリウム外壁にブルーを選ぶ際のデメリットや注意点も特にありません。
強いて挙げるなら、ちょっと“無難すぎる”といったところでしょうか?
ガルバリウム鋼板のメンテナンス方法
一般的に外壁に使われるガルバリウム鋼板はフッ素やガラス繊維などを配合したかなり頑丈な塗膜で仕上がっていますので、施工後20~30年くらいは塗装メンテナンスの心配は必要ないでしょう。
ただし下記のようにサビと雨漏りには少し注意が必要です。
サビ
主にサビを引き起こすのは、上に説明した「傷」と塩分です。
ガルバリウム表面が傷つかないように気をつけることに加えて、塩分が付着したままにならないように気をつけるのが、ガルバリウム鋼板を長持ちさせる主なメンテナンスになります。
特に「塩害地域」にあたる地域の住宅では、外壁を定期的に水洗いするようにしましょう。
通常、半年に一回程度、水道水で洗い落としたので大丈夫です。
ちなみに、海岸から何Km以内が塩害地域にあたるかは地方によってかなり異なります。
確認のためには各都道府県が発行している「塩害地域マップ」をチェックしてみましょう。
雨漏り
ガルバリウムの住宅のデザインは、ファサードの屋根部分が庇のないパラペット+片流れ、としている場合が多いように見受けられます。
これらはデザイン的にはスマートですが、雨漏りを防ぐという意味では弱点の多い構造です。
特にパラペット、またバルコニーなどの手すりの笠木部分は雨漏りの浸入経路となりやすい場所ですので、可能であればこのあたりのシーリングが劣化していないか、築5年後くらいから年に1度くらいはチェックしてみるとよいでしょう。
外壁や屋根をガルバリウムにする価格は?
屋根・外壁をガルバリウムへ張り替える場合の費用を知りたいという方もおられるでしょう。
ただ、屋根・外壁の形状や元の状態などは千差万別で一概に費用相場を提示することはできませんし、こういった工事の相場感は、けっこう地域差も出てくるところだと思います。
あくまで感覚ですが、30坪前後の平均的な家屋のサイディングをガルバリウムに張り替える場合の工事の総額は200~250万円程度、屋根をガルバリウムに吹き替える場合には100万~150万程度、と考えておくと良いかもしれません。このような工事の場合、窯業系サイディングを使用する張り替え工事に比べて若干ガルバリウムの方が安くなる傾向にありますが、差額はおそらく総工費の1割程度と大きな差にはならないことが多いようです。
カバー工法ならもっとお得?
屋根・サイディングを剥がさずに上から新しいサイディングを張り付ける「カバー工法」でリフォームすれば、確かに施工費用は抑えられます。
ただし、屋根・外壁の重量は増加してしまうため、「軽量」というガルバリウムのメリットが活かせませんし、費用も2~3割程度安くなるぐらいです。
カバー工法がベストな選択肢かどうかは、よく考えて判断しましょう。