2022.08.31

外壁塗装業界の市場規模や将来性を考える

みなさんは職業としての建築塗装業についてどんなイメージをもっておられるでしょうか?
もしかすると、自分でもやってみたいけどどれほどの収入になるか、将来性があるかなどがわからないという方も多いかもしれません。

そこでこの記事では、現在の塗装業界の市場規模や将来性などについて少しご紹介したいと思います。

塗装業界の現状と市場規模

建設塗装業の市場は住宅リフォーム市場に組み込まれています。
調査・計算の仕方によって数字に差が出ることもありますが、信頼できる情報によると2013年のリフォーム市場は7.8兆円でした。その内訳は下記のように報告されています。

  •  水回りリフォーム…約30.1%
  •  設備リフォーム…約16.3%
  •  内装リフォーム…約18.5%
  •  外壁・塗装リフォーム…約8.5%
  •  エクステリアリフォーム…約5.7%
  •  外部建具リフォーム…約5.1%
  •  その他のリフォーム…約15%

外壁塗装リフォームの構成比約8.5%は金額にすると6625億円ほどになります。

調査年は異なりますが、日本塗装工業会の調査によると2015年度の塗装工事の完成工事額は7920億円でした。
日本塗装工業会の調査では新築の塗装工事と塗替えの塗装工事を合算しており、内訳は下記のように報告されています。

  •  新築塗装工事額…1390億円(17%)
  •  塗替え塗装工事額…6530億円(83%)

リフォームだけでなく新築工事の需要もそれなりにあるということですね。
建築塗装業の市場規模の特徴としては、年ごとに多少の増減やコロナ禍の影響などはあるものの、大きく跳ね上がったり落ち込んだりすることなく安定している点が挙げられます。

ちなみに、塗装工の令和3年度の平均年収は463万円だそうです。(※令和3年賃金構造基本統計調査による)

外壁塗装のこれから

外壁塗装業界の今後の展望については、もちろんわかることもわからないこともあります。現時点でわかっていることに基づいて、建築外壁塗装業界のこれからについてポジティブな側面もネガティブな側面も率直にご紹介しておきましょう。

外壁塗装のポジティブな展望

1.安定した需要が見込める

家があえば必ず何らかの定期的なメンテナンスが必要になります。現在の住宅に使用されている外壁材のほとんどは10年前後で塗り替えが必要になりますので、塗装リフォームの需要は長期的に安定しています。

2.消費者の省エネに対する意識が高くなっている

省エネという言葉は何年も前から使われていますが、環境に優しい「持続可能な社会」の実現のために、近年では以前にも増して省エネが重視されるようになっています。

住宅に関しては、家の外装(屋根・外壁)の断熱・遮熱性が省エネに役立つ機能として、より注目されるようになっています。
断熱・遮熱塗料で行う屋根・外壁塗装リフォームは住まいの省エネ性能向上にも効果があります。

今後しばらくは屋根・外壁塗装においても、時代の流れに応じたこのような需要が続くと考えられます。

3.適切なリフォームが重視されつつある

日本では欧米諸国に加えて、リフォームよりも新築の市場に多額のお金が使われる傾向があります。

現在に至るまで日本の住宅の建築サイクルは、まだ住める状態にある既存住宅(住宅ストック)を取り壊して新築するというケース、または住宅ストックを壊すこともなく放置して新しい家を建てるというケースが多くありました。
結果として、住めるのに空き家になっている住宅、長年放置されて廃屋となった建物が日本には非常に多いという現状があります。
現在の建築業界にはこのような状況を見直し、「次々と新築するよりかも住宅ストックを活用しよう」という意識の変化が見られます。

住宅ストックを活用するには、屋根・外壁塗装を含めた適切な管理・定期的なメンテナンスが不可欠ですので、この点でも外壁塗装の需要が高まることを期待できます。

外壁塗装業界の問題点

1.人手不足と高齢化

これは建築業界全体に言えることですが、建築塗装業界でも人手不足や職人の高齢化が見受けられます。
建設業界全体では55歳以上が全体の約1/3、30歳未満は全体の約1/10というデータがあります。塗装業にフォーカスした年齢分布のデータはないですが、塗装業でもおおむね建設業界全体の年齢分布に準ずるといったところでしょう。

この人手不足・高齢化の原因は、ある程度の体力が求められ、高所作業など危険もともなう割に、年収は全体平均と比べて高くない、といった点が挙げられるかもしれません。

この人手不足・高齢化という塗装業界の問題も、逆にいえば若い世代の参入は業界として歓迎されるうえ、同世代間の競争率は低い、というメリットもあります。

2.利益率の低下

外壁塗装業特有の問題としては、工事金額に対して十分な利益を確保しにくいという問題もあります。

とくに、下請けとしての業務やネット上のポータルサイトを経由しての契約がほとんどという塗装業者は、やはり元請けやポータルサイトにマージンを引かれますので利益の確保が難しくなります。

塗装会社・塗装職人に求められるもの

リフォーム業は地域密着の経営で強さを発揮できる職種であり、外壁塗装業も例外ではありません。地域に根差し、安定してやっていくためには次のようなポイントが求められると考えられます。

会社の集客力・情報発信力

塗装業の営業利益を十分確保するためには、ポータルサイトや一括見積もりサイトなどになるべく頼らなくてよい、独自の集客力を身に付ける必要があります。
やはり重要なのは情報発信力。単に「当店では格安で屋根・外壁塗装を行える」というような価格面のアピールだけでなく、どんな技術・実績を持つ業者なのか、どんな保証・アフターサービスがあるかなど、お客さんが知りたい情報を積極的に発信していくことが大切です。

加えて、家を長く快適に保つために塗装メンテナンスがいかに大切か、一回の工事が100万円を超えることもある塗装リフォームをきちんと定期的に行なうメリットはどこにあるのかなどの役立つ情報もしっかり発信していく必要があります。

また外壁塗装業は地域に根差した経営を確立することが重要です。インターネットだけに頼るのではなく、一件一件のお客様との丁寧なコミュニケーションで地域との信頼関係を築いていくことも、安定した経営のために大切なスキルとなります。

確かな技術力

どれだけ多く集客できても、お客さんを満足・納得させるだけの塗装技術がなければ経営はたちまち立ち行かなくなってしまうでしょう。
会社として、そこで働く塗装職人として、高い技術を身につけることが重要なポイントになります。
会社としては、日進月歩の各塗装メーカーから発売される、高機能な新商品の知識や取り扱いの技術を学び続けることが必要でしょう。

職人としては、2~1級の塗装技能士という国家資格の取得を目指せば、スキルアップや収入増、さらには独立も視野に入れることができ、仕事のやりがい・達成感にもつながるでしょう。
さらに国家資格の「建築施工管理技士」や「防水施工技能士」、民間資格の「外壁診断士」など、外壁塗装に関連する資格をいくつも身に付けて仕事の幅を広げている職人もいます。

まとめ

建築塗装業の市場は比較的安定しており、今後大幅にその市場が縮小していくことはまずないと見ていいでしょう。また、塗装は技術職ですので、職人の仕事がAIに奪われるような心配もありません。

全国平均を大きく上回るような高収入を目指せる仕事ではありませんが、若い人が手に職を身に付け、地元での独立も視野に入れつつ長くやっていくのには良い選択肢です。関心のある若いみなさんは、ぜひ建築塗装業界に飛び込んできていただければと思います。

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