現在、新築戸建て物件の外壁材におけるトップシェアはサイディングボードで、窯業系・金属系を合わせて約80%、それに対してモルタルのシェアは約13~15%といわれています。
現状ではモルタル外壁のシェアが低いというのは事実ですが、1970〜80年代ぐらいには結構な人気を誇っていたようで、現在でもモルタル外壁の建築物は数多く残されています。
モルタル壁のメリット
窯業系サイディングボードは一昔前と比べても本当に多種多様な選択肢があり、石造りを模したものや木目調のものまで、デザイン性が高いものが豊富に用意されていますし、ガルバリウムを中心とした金属製サイディングのシックで都会的な雰囲気も非常に魅力的です。
しかし、「一点もののサイディングボード」というのは存在せず、全ては既製の量産品であるため、オリジナリティを求める方には不向きであることも否めません。
その点、モルタル壁は最終的な塗装方法の多様性などとも合わせて考えればデザイン上の自由度はサイディングに比べて高く、外壁を“一点もの”の仕上げとすることも可能です。実際、モルタル壁は大手ハウスメーカーの作る規格住宅よりも、建築家によるデザイン性の高い注文住宅に採用されることが多いようです。
外壁材の仕上げ(塗装を含まない)の種類は、工場で完成されたボード類を釘やビスで張り付ける「乾式」と、漆喰やセメントなどの水分を含む材料を現場で練り合わせて塗り上げる「湿式」の二つに分類されます。
サイディングボードよりもモルタル壁のような湿式工法の方が、かかる費用・時間ともにかさんでしまうのです。
費用面はケースバイケースのためざっくりとした説明になってしまいますが、おそらくモルタル壁はサイディングボードで仕上げるより1.5〜2倍程度の費用がかかると考えておくと良いでしょう。
モルタル外壁塗装1:リシン仕上げ
「リシン仕上げ」は細かな骨材(寒水石など)の混ざった塗料をスプレーガンで壁面に吹き付ける塗装方法で、表面は砂壁のようなざらざらとした仕上がりになります。
リシン仕上げは、含まれる骨材がこの塗装の最大の特徴で、出荷時点ですでに塗料の中に混ぜ合わされているものもあれば、塗料と骨材を塗装時に調合するものもあります。骨材の大きさでリシン仕上げの表情は変化し、骨材のサイズは1厘(0.3mm)、3厘(0.9mm)、5厘(1.5mm)などがあります。
吹き付けを行う際には、スプレーガンを塗装面から適切な距離を保ちつつまっすぐに吹き付けなければムラができてしまうため、慣れていないとなかなか難しい塗装法です。
ベースになる塗料はアクリル系であることが多く、また塗膜も薄くなるため耐用年数の目安は8〜10年ほどとそんなに長くはありません。
塗り替えの際には凹凸のためにローラーが使えず刷毛(はけ)塗りとなり、その他の塗り替えと比べるとちょっと時間と手間がかかります。
モルタル外壁塗装2:スタッコ仕上げ
「スタッコ」(stucco)とは直訳すると「化粧漆喰」ですが、アメリカでは外部塗壁の総称として使われる言葉です。
スタッコ仕上げで使用される素材は、通常の漆喰だけでなく石膏プラスター・ドロマイトプラスター・色モルタル・などが使用され、それらの素材をコテや木片等を使って叩いて引き上げたりコテで型付けしたりするなどして、さざ波のような凹凸を均一に生み出します。
リシン仕上げとの区別がつきにくく感じられるかもしれませんが、
基本的にスタッコ仕上げには、
などの点を特徴として挙げられるでしょう。
とはいっても、スプレーガンによる吹き付けで仕上げるスタッコ用塗料や、骨材が入っていても商品名に「スタッコ」とついている塗料などの製品もあり、そのような塗装では、リシン仕上げとの違いがほとんど感じられないかもしれません。
モルタル外壁塗装3:タイル吹き仕上げ
「タイル吹き仕上げ」は、骨材を使用せず、滑らかな凹凸を生み出す塗装方法です。
「タイル」という名が付されていても、一般的な陶磁器タイルによる外壁とは全く別モノの仕上げ方です。
シーラー(下塗り材)を塗装した上に凹凸を生み出すメインの塗材(主材)を吹き付け、仕上げに外壁塗料を塗装すれば、タイル吹き仕上げの完成になります。主材の吹き付けで出来上がる凹凸は丸みを帯びた玉状になるため、塗装業者内では「玉吹き」とも呼ばれています。
タイル吹き仕上げで壁面に生まれる凹凸は、上で紹介したのリシン仕上げやスタッコ仕上げに比べて滑らかになるのが特徴です。
吹き付け後に専用の道具で丸みのトップを少し平たく押さえる、「ヘッドカット」という仕上げ方法もよく使われます。
タイル吹き付けは一般的な塗装に比べて難易度が高く、熟練した職人が行わないと、吹き付けの際の玉模様にばらつきが生じて美しい仕上がりになりません。
モルタル外壁塗装4:左官仕上げ
「左官仕上げ」とは、漆喰、珪藻土などの塗り壁用の素材を壁面に塗り付ける際、あえて凹凸を残し、壁面に多彩なテクスチャー感を生み出す技法です。最近では「ジョリパット」などの新素材も高い人気を博しています。
壁面全体を手作業で仕上げるため、高級感・オリジナリティーのある壁面となりますが、施工費用も一般的な塗装に比べて高額になることが多い技法です。また、サイディングボードのような既製品による外壁であれば仕上がりは誰が施工しても大きな違いは生じませんが、左官仕上げでは、その施工品質は職人の腕に非常に大きく左右されます。
この仕上げ方には、
など、さまざまなパターンがあります。
このような仕上げのパターンと、素材の色や質感を組み合わせて生み出される左官仕上げのテクスチャー感や色彩は多岐に渡ります。