2025.03.7

普及率は1番、モルタル外壁の特徴を知って外壁を長持ちさせる

30~40年前、日本の住宅ではモルタル外壁が主流でした。
しかし、現在ではサイディングボードが広く普及し、新築住宅でモルタル壁が採用されることは少なくなっています。
とはいえ、モルタル外壁の建物はまだ多く残っており、適切なメンテナンスを行うことで長く美しさを保つことが可能です。

今回は、モルタル外壁の特徴やメリット・デメリット、適切なメンテナンス方法について詳しく解説します。

モルタルとは?コンクリートやセメントとの違い

モルタルとは、「セメント・水・砂を混ぜたもの」のことを指します。
よく似た建築材料としてコンクリートやセメントがありますが、それぞれの違いを簡単にまとめると以下のようになります。

  •  セメント:粉末状の材料。水と混ぜることで硬化する
  •  モルタル:セメント+水+砂で作られる。壁の仕上げ材などに使用
  •  コンクリート:セメント+水+砂+砂利を混ぜたもの。強度が高く、建物の構造材として使用

セメントは水を加えると化学反応を起こし、時間とともに固まる性質を持っています。
建築分野では「ポルトランドセメント」が一般的で、その歴史は古く、古代ローマ時代にはすでにセメントに似た建材が使用されていました。

モルタルは、サイディングボードなどの建材が普及する前、外壁の主流として使われてきました。
その理由は、自由なデザインが可能で耐久性も高いからです。現在でも、左官職人による独特の質感や意匠性を求める建物では採用されています。

外壁材として、サイディングとモルタルを比べる

 施工方法の違いと職人の技術

モルタル外壁の施工は「左官工事」に分類されます。
職人が柔らかいモルタルを手作業で壁一面に塗り上げるため、高い技術が求められます。

しかし、近年は左官職人の減少により、熟練した職人にモルタル外壁の施工を依頼するのが難しくなってきているのが現状です。

一方、サイディングボードは工場で製造されたパネルを建物に貼り付けて施工します。
職人の腕による仕上がりの差が出にくく、一定の品質を保ちやすいのが特徴です。
施工の難易度もモルタル壁に比べて低いため、工期が短縮できる点もメリットの一つです。

そのため、現在では新築住宅の外壁の主流となっています。

 デザインの自由度で勝るモルタル壁

施工のしやすさやコスト面ではサイディングが優れていますが、デザイン性の面ではモルタル壁が大きく勝ります。
サイディングボードは工場生産のため品質が均一で、施工後の仕上がりもほぼ同じになりますが、モルタル外壁は左官職人の技術やセンスによって唯一無二のデザインを実現できます。

例えば、「スタッコ仕上げ」や「リシン仕上げ」など、さまざまなテクスチャーを表現できるため、ナチュラルな風合いや高級感のある外観を演出したい住宅では、今もモルタル外壁が採用されることが少なくありません。
特に、注文住宅やデザインにこだわる建物では、モルタルの質感や独自の仕上げが評価され続けています。

つまり、モルタル外壁は「シェアが低い=需要がない」というわけではなく、デザイン性を重視する住宅において根強い人気を誇っています。

モルタル外壁のメリット・デメリット

 モルタル外壁のメリット

【1】デザインの自由度が高い

モルタル外壁の最大の魅力は、仕上げのバリエーションが豊富で、オリジナリティのある外観を作れることです。
左官職人の技術によって、以下のような多彩な仕上げが可能です。

  •  スタッコ仕上げ:立体的で重厚感のある質感
  •  リシン仕上げ:ざらざらとしたマットな風合い
  •  吹き付けタイル仕上げ:独特の模様や陰影を作り出せる

このように、工場生産のサイディングボードでは出せない個性的な外観を実現できます。
特に、洋風・和風どちらのデザインにもなじむため、注文住宅やデザイン性を重視した家づくりに適しています。

【2】継ぎ目のない美しい仕上がり

サイディングボードはパネルを貼り合わせるため、目地(つなぎ目)が発生しますが、モルタル外壁は一面を塗り仕上げるため、継ぎ目のない美しい仕上がりになります。
これにより、外観がスッキリと洗練された印象になり、高級感を演出できます。

【3】耐久性が高く、適切なメンテナンスで長持ちする

モルタル外壁は、適切なメンテナンスを行えば長く使い続けられる外壁材です。
塗装の塗り替えやひび割れ補修を適切に行えば、長期間にわたり美しさと機能を維持できます。

 モルタル外壁のデメリット

【1】ひび割れ(クラック)が発生しやすい

モルタルは乾燥や気温変化による膨張・収縮の影響を受けやすく、経年とともにひび割れ(クラック)が発生することがあります。
特に、細かい「ヘアクラック」程度であれば問題ありませんが、大きなひび割れになると雨水が浸入し、内部の劣化を招く可能性があります。
そのため、定期的な点検と補修が必要です。

【2】施工に手間と時間がかかる

モルタル外壁は、左官職人が手作業で塗り上げるため、施工に時間がかかります。
また、職人の技術によって仕上がりの質が左右されるため、高品質な施工を求める場合は経験豊富な職人に依頼する必要があります。
その分、サイディングと比べて施工費用が高くなる傾向にあります。

【3】定期的なメンテナンスが必要

モルタル外壁は耐久性が高い一方で、塗装の塗り替えやクラックの補修など、定期的なメンテナンスが欠かせません。
特に、塗装の劣化を放置すると防水性が低下し、雨漏りや内部の劣化を引き起こす可能性があります。
外壁塗装の目安としては、10~15年ごとに塗り替えを行うのが理想です。

モルタル外壁の寿命とメンテナンス

モルタル外壁の寿命は一般的に30年程度とされていますが、これはあくまで目安です。
実際の耐用年数は、メンテナンスの頻度、立地条件、初期施工の品質などによって大きく変動します。
適切なメンテナンスを行えば、モルタル外壁は30年以上の耐久性を持つことも可能です。

 クラック(ひび割れ)への対処が長寿命の鍵

モルタルは乾燥や気温変化によってひび割れ(クラック)が生じやすい素材です。
特に、モルタル壁の下地には金属製のラス網が使用されており、クラックから雨水が浸入すると、このラス網が錆びて膨張し、壁面の剥落やさらなる損傷を引き起こす可能性があります。

このような劣化を防ぐためには、以下のメンテナンスが重要です。

  •  弾性塗料の使用:細かなクラックをカバーできる弾性塗料で塗装することで、ひび割れの進行を防ぎます
  •  早期のクラック補修:塗膜でカバーしきれない大きなクラックは、コーキング材などで早めに埋めることが必要です

 定期的なメンテナンスの重要性

モルタル外壁の劣化を最小限に抑えるためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。
一般的には、以下の周期でのメンテナンスが推奨されています。

  •  新築時:5~10年ごとに塗装の塗り替え。新築時には耐用年数が10年以上の塗料が使用されることが少なく、劣化が早いためです
  •  再塗装後:10~15年ごとに塗装の塗り替え。再塗装時には耐用年数が10~15年程度のシリコン系塗料が使用されることが多いためです

ただし、これらはあくまで目安であり、建物の立地環境や使用されている塗料の種類によって適切なメンテナンス周期は異なります。
定期的な点検を行い、劣化症状が見られた場合は早めに専門業者に相談することが、モルタル外壁を長持ちさせる秘訣です。

モルタル外壁は「美しさと耐久性」を重視する人におすすめ

モルタル外壁は、デザイン性の高さや継ぎ目のない美しい仕上がりが魅力的な外壁材です。
一方で、施工に手間がかかることや、ひび割れが発生しやすいといった注意点もあります。
モルタル外壁の特性を理解し、適切なメンテナンスを行うことで、美しさと機能を長期間にわたって維持することが可能です。
「個性的な外観にこだわりたい」「長く使い続けられる外壁を選びたい」という方には、モルタル外壁がおすすめです。

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