例えば、屋根の点検を依頼した業者から、「“むねがわら”にダメージがきている」とか、「“ひろこまい”が一部腐っている」などと報告を受けても、なんのことかはっきりイメージできる人は少ないのではないでしょうか。
今回は、施主も知っておくと便利な家屋の様々な部位の名称についてご紹介します。
家屋の部位を知っていると塗装業者との意思疎通に便利
ごく一般的な木造一戸建てにも、様々な部位の名称がありますが、複雑な形状をしていることの多い屋根まわりには特に多くの専門的な名称が使われています。
これらの専門用語は住んでいる人自身にも馴染みのないものが多いため、屋根・外壁の塗装やリフォームを行う際には、施工業者との意思の疎通を難しく感じる人も多いでしょう。
施主も木造住宅の様々な部分の名称が、どこの、どんな役割を果たす部分を指すのかを理解しておくなら、施工業者とのコミュニケーションはスムーズになり、満足のいくリフォーム工事を行うのに役に立つでしょう。
外壁塗装で知っておきたい家の部位
まずは特に外壁周りや構造体としてよく聞く名称を覚えておきましょう。
雨戸・戸袋
これはよくご存知の方も多いでしょう。日本の住宅に昔からよくある、ガラス窓を完全に塞ぐように設置される引き戸が「雨戸」、その雨戸が収納されているのが「戸袋」です。
外壁塗装の見積もりでは雨戸や戸袋は壁面とは別にして個数で費用を計算します。
シャッター・シャッターボックス
最近では雨戸の代わりにシャッターが付いている家が多いようです。
シャッターが収まっている部分をシャッターボックスと呼びます。
幕板(「胴差し」と言われることも)
1階部分と2階部分の外壁の色を変えているツートンの外壁で色の境界部分に貼り付けられているのが幕板です。幕板とはもともと「帯状に長い板」というような意味があるので、他の箇所に使われる部材も、形状によっては「幕板」と呼ぶことがあります。
塗装業では1階と2階の中間にある幕板部分を「胴差し(どうざし)」と呼ぶこともありますが、建築一般では胴差しとは2階建以上の木造建築で、2階以上の階の床部分の一番外側に配置される木材を指します。
胴差しは幕板の下地あたりにあることが多いですが、構造上の相互関係は特にありません。
矢切
屋根の形状が切妻(きりつま)や入母屋(いりもや)の場合、妻側の壁の上方にできる三角形の部分の、特に棟に近い頂点付近を「矢切(やぎり)」といいます。「屋切」と書かれる事もあります。
雨がかかりにくい場所なので、矢切にはよく換気口が設置されます。昔の家では矢切に設置される換気口は横長型や丸型が一般的でしたが、よく目立つ場所であるため、最近では縦長型でデザイン性の高いもの、和モダン風の格子付きのものなど、選択肢も増えているようです。
矢切に換気口がない家では、アイアン製の妻飾りなどを設置するのも最近の流行のようですね。
霧除け、庇
庇(ひさし)はメインの屋根から独立した小型の屋根部分全般を指し、小さなものから建物の端から端まで張り伸ばされたような大型のものまで、形状はさまざまです。
霧除けとは庇の一種で、窓に雨が入りにくいように特に窓の上のみに設置された小型のものを指します。
最近のコストカット重視の家の中には板金のみでできたごくシンプルな霧除けや、霧除け自体が無いパターンも見られます。
笠木
陸屋根のパラペットやベランダ・バルコニーの手摺部分の最上部に笠のように設置されている部分が「笠木(かさぎ)」です。
名称に「木」が入っていますが、ほとんどの場合、笠木は木製ではなく金属製の仕上げになっています。昔の笠木は現場に合わせた板金工事で仕上げていましたが、最近では既製品をカットして設置するだけの笠木が主流のようです。
窓水切り
降雨時に雨水が室内側や壁の内部に流れないよう窓サッシの下端部についた、水切りです。
サッシと窓水切りは一体型となっていることが多いようです。
ベランダー・バルコニー
混同されがちですが、二階以上の屋外側に設置されたスペースで、屋根・庇のないものを「バルコニー」、屋根があるものは「ベランダ」と定義されます。
また、ベランダは基本的に人の出入りがあるのに対し、バルコニーは人が立てないほど狭いものもあります。
塗装に関しては、最近の家ではベランダ・バルコニーの外壁・手摺だけ色やサイディングのデザインを変えて、アクセント・立体感を演出する意匠が多く見られます。
軒天
軒・庇の裏側部分が「軒天(のきてん)」と言われ、バルコニーの天井なども軒天に含まれます。「軒天井(軒てんじょう)」と呼ばれることもあります。
ほとんどの建物において軒天は面積的に広くありませんが防火性能や屋根裏の換気などに大きな影響がある部分で、最近では不燃材(ケイカル板など)が使われるのが一般的です。
軒天には換気のために一定間隔で穴のあいた有孔ボードが使用されたり、軒天用の換気口が設置されたりします。
雨樋
屋根に降る雨を集めて所定の場所に排水する建材です。
素材としては塩ビが一般的ですが、最近では金属系サイディングの家にもマッチするようデザインされたガルバリウム等の金属製の雨樋もあります。
横樋、竪樋、集水器(上合)
雨樋のうち、水平方向の部分を「横樋」、垂直方向の部分を「竪樋」、横樋と竪樋を繋ぐ升状の部分を「集水器(または「上合(じょうごう)」)と呼びます。
屋根塗装で知っておきたい屋根の部位
屋根には名称が一般的に知られていない部位も多くあります。下記のような部位を覚えておくと良いでしょう。
棟(むね)
勾配のある屋根の頂点になる部分です。これはよく知られた名称かもしれません。
頂点で棟の下地になっている木材を「棟木(むなぎ)」、棟に使用されている瓦を「棟瓦(むねがわら)」といいます。
棟は地震によるダメージが集中する部分でもあるため、大きな地震があると棟の修繕工事が特に多くなります。
妻側・平側
これは部位の名称ではなく方向を指す名称ですが、屋根の勾配が流れる方向を「平側」、棟の終端がくる部分を「妻側」といいます。
わかりやすく言えば、降雨時に雨が流れ落ちてくる側が「平側」、流れ落ちてこない側が「妻側」です。
そのため、雨樋がついている方が「平側」、ついていない方は「妻側」というわけです。
破風・鼻隠し
軒先の垂木の小口(断面)を覆い隠すようにして設置する幕板状の部材を「鼻隠し」といい、これが妻側に設置されると「破風」という名称になります。
区別せずにどちらも「破風」ということもあります。
屋根・外壁塗装の見積書では他の部分と項目を分けて記載されることの多い部分です。
広小舞(ひろこまい)
軒先側の垂木の端部の上に被せるように設置する板で、狂いがちな垂木の先端をまっすぐ直線に揃えるという役割を果たしている部材です。妻側に設置されている同じような部材は「登りよど」と呼ばれることもあります。
経年劣化しやすく、屋根をリフォームする際には修繕しなければならなくなることの多い部分です。
最近では広小舞を使用せず、軒先まで野地板を張りつけるケースも多くなっています。
天窓、ドーマー
屋根をくり抜いて窓を設置したものを天窓と呼びます。
屋根からさらに小型の屋根が突き出したような形状の部分を作り、そこに窓を設置したものを「ドーマー」と呼びます。
天窓には傾斜があるのに対し、ドーマーは垂直に設置されます。
天窓の目的は主に採光に関するもので建物のデザインに大きく影響しませんが、ドーマーを設置すると建物はかなり洋風な趣になります。