「コロニアル」はとても人気のある屋根材の一つです。
コロニアルは「スレート屋根」や「カラーベスト」と呼ばれることもありますが、これらは基本的に同じものと考えて差し支えありません。
コロニアルは日本の伝統的な屋根材である瓦と比べて重さは半分以下と軽く、最近人気を博しているガルバリウム鋼板よりもやや安いというのが人気の秘密のようです。
このコロニアルはとても優秀な屋根材ですが、施工方法を間違うとすぐに雨漏りしたり、長期的な問題として屋根材が腐敗してしまったりするため、きちんと施工しなければなりません。
コロニアル屋根を塗装する際に行わなければならない特有の手順の一つに「縁切り」と言われる作業があるのですが、今回はこの「縁切り」がなぜ重要なのかをご説明します。
コロニアル屋根の塗装に必要な「縁切り」作業
コロニアルはセメントや天然石などを主な素材としており、サイズは900mm×500mmほど、厚さは5mmほどのかなり薄い屋根材です。
この屋根材を適度に重ね合わせながら屋根を葺き上げていきますが、重なり部分で部材をべったりと隙間なく貼り付けてしまうと色々と問題が出てくるので、コロニアルの重なり部分には適度な隙間を確保しなければなりません。
コロニアル屋根の塗装を行うと、塗料がコロニアルの重なりに必要な隙間を塞いでしまうため、最終的に引っ付いてしまったコロニアルを一枚一枚引き離していく「縁切り」といわれる作業が必要になりますが、「タスペーサー」という道具を利用すれば縁切り作業をより効率的かつ安全に行えるようになるのです。
タスペーサーとは「縁切り」に使う部材
縁切りは必要だけどカッターでの縁切り作業には手間と時間がかかってしまう、という問題を解決してくれるのが「タスペーサー」です。
タスペーサーはクリップのような形をしていて、コロニアルの重なり部分にこのタスペーサーを差し込めば、コロニアル材が持ち上げられ簡単に縁切りができる上、防水機能に必要な隙間も確保できるという優れものです。
屋根塗装を行う際、下塗りが終わった段階で屋根全体にタスペーサーを設置していきます。
その後中塗り・上塗りを行うと塗料は固まってもコロニアルの重なり部分の隙間をふさいでしまうことがないため、カッターによる地道な縁切り作業は必要ありません。
タスペーサーを使った「縁切り」の効果
適度な隙間がなければ雨水は吸い上げられられてしまう
水は表面張力により“微細な隙間があると重力に反して吸い上げられる”という不思議な性質があります。
この性質があるために、コロニアルの重なりには一定以上の隙間がなければ雨水は逆に棟側へと吸い上げられてコロニアルの下に入り込み、コロニアル材の下に打たれた釘などを伝って雨漏りが発生するのです。
タスペーサーによる「スペースの確保」が屋根を長持ちさせる
表面張力による雨水の吸い上げは隙間の間隔が一定以上であれば生じません。
タスペーサーでできる隙間によって屋根の水はけが良くなり(「雨水のキレがいい」と表現することもあります)、また屋根の内側と外側の温度差によって生じる結露の水分も取れやすくなるため、屋根は雨漏りや腐敗から守られるというわけです。
タスペーサーを必要としない場合
タスペーサーはすべての屋根に絶対必要、というものではありません。
例えば、コロニアル屋根以外の屋根材で葺く場合には当然タスペーサーの出番はありませんし、すでにコロニアルの重なりに4mm以上の隙間が生じている場合や、同じ家屋の屋根でも紫外線が強く当たる面では、コロニアルが自然に反ってくることを見越して、タスペーサーの設置を省略する、ということもあります。
そのため、仮に見積もりにタスペーサーの項目がなくても、施工業者が手抜き業者だとは限りませんが、手抜きされやすい作業でもあるので、見積書にタスペーサーの項目がなければ、ちょっと業者に確認を取ってみるのも良いかもしれません。