2023.07.10

1級と2級で資格の性質が違う建築施工管理技士とは? 

 

屋根・外壁塗装業を営んでいる業者のうちの多くには、「建築施工管理技士」が在籍しています。

塗装には直接関係なくても、塗装業を経営し、大きな仕事を請け負う上で大切な「建築施工管理技士」について、今回はご紹介します。

建築施工管理技士ってどんな資格? 

「建築施工管理技士」とは「建設業法」に基づいた国家資格で、建設工事現場に関して下記のような業務を担当します。

  •  工程管理…請け負った工事が工期内に完了するよう、必要な作業員や重機などを手配し、綿密なスケジュール管理を行います。
  •  原価管理…工事ごとの人件費や積算などを管理します。
  •  品質管理…建築資材の適切な保管や取り扱い、施工品質などを管理します。
  •  安全管理…作業者が安全に工事を行えるよう、現場や工事に関わる設備などを管理します。

ほかにも、建築工事を進める上で必要な、発注者との打ち合わせ、現場に必要な有資格者や技術者の手配や監督、安全指導など建設業に関わる多岐に渡る業務を様々な形で担当します。

建築施工管理技士には「1級」と「2級」があり、2級の資格は業務内容に合わせて下記の3分野に分けられています。

  •  建築(建築工事一式・解体工事)…複数の専門分野を含む建築工事と解体工事。
  •  躯体…鉄筋やコンクリート圧送、ブロック工事など。
  •  仕上げ…内装と外装に関わる板金・塗装・石工・防水工事など。

資格の正式名称は「2級建築施工管理技士(建築)」のようにカッコ書きで表記します。

くりはら塗装の業務に含まれる、塗装工事・防水工事などは、上記の「二級建築施工管理技士(仕上げ)」に該当するので、当社の代表もこの資格を保有しています。

建築施工管理技士は若い人や女性、外国籍の方にもチャンスが広がる資格!

建築施工管理技士は若い人や女性、外国籍の方にもチャンスが広がる資格!

将来の建設業全般における人手不足を解消することを目指し、建築施工管理技士に関する規定は2017年の改定により受験資格が緩和されたため、多くの人にとって挑戦しやすい資格となりました。

現在では、2級建築施工管理技士の1次試験は試験実施年度に年齢が満17歳以上であれば、外国籍の方を含めてどなたでも受験可能となっています。

試験回数は年2回で、1次試験に合格すれば「技士補」という資格が手に入ります。

現在では官民が協力して「女性が働きやすい建設業」を目指しているところです。

建築施工管理技士は簡単な仕事ではないものの、肉体労働ではありませんので女性でもさらにキャリアアップできる可能性は十分にあります。女性であっても建設に関心がある方はぜひこの資格に積極的にトライしていただきたいところです。

「1級」と「2級」それぞれの資格を持っていると、下記のような業務が可能になります。

2級建築施工管理技士にできること

  •  業者が請負金額500万円以上の建設工事を請け負う際に必要な「建設業許可」を取得できる。
  •  原則として請負金額4000万円未満の建設工事現場すべてに配置しなければならない。「主任技術者」になれる。

1級建築施工管理技士にできること

  •  どんな種類の建設工事も管理・監督できる
  •  元請け業者として、下請け業者と4000万円以上になる工事契約を締結する工事を請け負う場合に現場に配置しなければならない「監理技術者」になれる。

ほとんどの塗装工事は「二級建築施工管理技士」でカバーできる

ほとんどの塗装工事は「二級建築施工管理技士」でカバーできる

上記のように、建築施工管理技士は1級と2級で管理・監督できる工事の請け負い金額(つまり工事の規模)が4000万円を超えるか超えないかという点以外では、行うべき業務内容にはほとんど差がありません。

もちろん、工事の規模が大きくなればそれだけ建築施工管理技士が果たさなければならない責任も大きくなりますが、一般的な戸建て住宅を専門にしている塗装業者なら、工事代金が4000万円を超えるような大規模な工事の元請けになることはほとんどありません。

そのため、一般住宅の屋根・外壁塗装を専門にして経営していくための資格としては「2級建築施工管理技士」を持っていれば十分、ということになります。

2021年に制度改定!建築施工管理技能士の試験内容の変更点は?

2021年(令和3年)に建築施工管理技能士の制度・資格試験はいくつかの点が変更されました。主な変更内容は下記の通りです。

  •  「学科試験」「実技試験」の制度を廃止、「1次検定」「2次検定」へ改定
  •  「技士補」の資格を新設
  •  「1次検定(旧「学科試験」)合格」の有効期限が無期限に
  •  実務経験なしでも「1級1次試験」まで受験可能に

この改定により、かつて「学科試験」「実技試験」と言われていたものが「1次検定」「2次検定」となり、新設された「技士補」の資格とあわせて新制度での資格取得は下記のようになります。

  •  「施工管理技士2級」1次試験の合格者  「2級技士補」
  •  「施工管理技士2級」2次試験の合格者  「2級技士」
  •  「施工管理技士1級」1次試験の合格者  「1級技士補」
  •  「施工管理技士1級」2次試験の合格者  「1級技士」

この変更では『1次試験を合格した時点で「技士補」という新資格が手に入る』というのが大切なポイントになります。
「技士補」は技士の監督下で、現場の管理を担当することができるようになります。これは建築業界の人手不足に対応するための新制度と言えるでしょう。
この「技士補」の資格は時間が経過すると無効になるものではないので、1次試験に合格した実績はいつまでも有効になります。

また、かつては「1級学科試験」の受験にも実務経験が必要とされていましたが、新制度では「1級1次試験」まで実務経験なしで受験することができます。
未経験・無資格から1級施工管理技士を目指す場合、新制度では下記のような段階でステップアップを目指せるようになります。

  •  2級1次に合格  「2級技士補」へ
  •  2級2次に合格  「2級施工管理士」へ
  •  1級1次に合格  「1級技士補」へ
  •  「1級技士補」として実務経験を積む(5年以上)
  •  1級2次に合格  「1級施工管理士」へ

2020年までの「学科試験」合格者の扱いはどうなる?

2020年までの「学科試験合格者」にそのまま「技士補」の資格が付与されることはありませんが、現在でも旧制度の「免除期間」が適用されます。
つまり、元々の免除期間内に新体制の1次試験に合格すれば「施工管理士」となることができます。
この免除期間が過ぎると1次試験からやり直すことになります。

建築施工管理技能士の合格率は? 難易度を知ろう

施工管理技士試験の合格率は年度や分野によって差がありますが、直近5年のデータを平均すると

  •  2級1次試験の合格率…約35%
  •  2級2次試験の合格率…約40%

となっています。
近年の合格率は向上している傾向が見られるので、しっかりと対策を練って計画的に勉強を進めれば、十分に合格を視野に入れられるでしょう。

この資格の旧制度を含めた直近5年間の合格率については下記のようなデータがあります。

2級建築施工管理技士の合格率

2級1次試験合格率
2018年…25.9%
2019年…31.6%
2020年…35.0%
2021年…49.0%
2022年…42.3%
2級2次試験合格率
2018年…25.2%
2019年…27.1%
2020年…56.7%
2021年…52.9%
2022年…53.1%

2級建築施工管理技能士の勉強方法は? 

建築施工管理技能士の勉強方法は?

2級建築施工管理技士の1次試験

 1次試験の内容
学科試験は四肢択一のマークシート形式で出題されます。
設問内容は建築学や施工方法などに基づいたもので、「建築学」「施工管理法」「建築法規」などの分野に分けて出題されます。
 1次試験の勉強方法
建築と施工に関して広範な知識を必要としますが、正答率が6割を超えれば合格できる確率は一気に高まりますので、全問正解を目指す必要はありません。
建築施工管理技士の学科試験は少し特殊で、「どの問題に回答するかをある程度選べる」という特徴があります。

具体的に説明すると、2級建築施工管理技士の学科試験では出題数は50問ありますが、そのうち40問を選択して回答すれば良いのです。その40問のうちの6割(24問)に正解できれば学科試験に合格となります。
分野ごとに必要回答数が設定されているため、例えば「建築法規は苦手なので法律関係はすべて飛ばす」ということはできませんが、出題される65問のうち24問だけ正解できればいい、と考えると、そこまでハードルは高くないでしょう。

まずは得意分野から勉強を始めて、自分にとって勉強に長い時間をかけなくても理解できる分野へと進んでいきましょう。
通信講座を活用したり、独学でも過去問題集・解説書などでしっかり勉強したりすれば合格を目指せます。

2級建築施工管理技士の2次試験

 2次試験の内容
2次試験はマークシート+記述方式で出題され、2022年度の試験ではマークシート方式で14問、記述式の大問が3問出題されたようです。出題範囲は建築の施工管理全般に渡り、こちらも正答率60%が合格基準となっています。
 2次試験の勉強方法
2次試験に合格するためには、独学だけでは厳しい部分もありますので、講座や講習会などを受講するのがオススメです。

近い将来に建築施工管理技士を受験したいと考えている人であれば、今から実務内容を実地試験と照らし合わせながら頭に入れておくと良いでしょう。

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