特定の業界の人達が、日本語だけど理解できない言葉で会話しているのを聴いたことがありませんか?
そのように特定の業界に所属する人にしかわからないような単語・表現を「隠語・符丁(ふちょう。符牒・符帳と書くことも)」と言い、医療・建築・金融などの様々な業界でそれぞれ独自のものが使用されています。
「隠語」というと、その字面から何か都合の悪いことを隠したりごまかしたりするときに使う言葉のように思えるかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。
外壁塗装業界にも隠語・符丁はたくさん存在します。
といっても、外壁塗装業界で使われる隠語・符丁のうちのほとんどは、塗装業に関する特有の動作や感覚、または塗装作業のクオリティーなどを表現するために用いられるもので、施主から何かを隠したりごまかしたりするための言葉ではありませんのでご安心ください。
塗装業界独自の符丁は最近の若い塗装職人の間ではあまり使用されなくなっているようですが、年季の入った職人たちの中には自分たちの隠語・符丁を独自の文化として大切にし、次世代へ語り継いでいきたいと考えている人も多いようです。
塗装業の隠語・符丁は地方独特のバリエーションまで含めると数え切れないほど存在するため、ここですべてをピックアップすることはできませんが、代表的な隠語・符丁・専門用語をいくつかご紹介しましょう。
人や動作に関する塗装業界の隠語・符丁・専門用語
- 仕事をすること。一般の建築業界では逆に何もしないでいることを「遊ぶ」と言ったりします。
- 研磨やケレン作業を行うこと。
【用例】「ペーパー(サンドペーパー)を当てる」 - 塗料を希釈すること。
- 怒る、イライラすること。
- 食事をすること。
- 見習い職人のこと。
- 子供のこと。
- ペンキ屋・塗装業者のこと。地方によっては「トロ屋」と呼ぶこともあり、主に同業他社やその職人をさして使われます。
- 親方や現場監督のこと。時には施主のご主人などを指すこともあり、「偉い人、上の人」などに使われます。
- 職人の奥さんや彼女のこと。
仕事内容や道具に関する塗装業界の隠語・符丁・専門用語
- 特定の仕事を省略する、やらないこと。
- 作業を急ぐこと。
- 付着させること。
- 避ける、抜ける、といった意味。現場工程で次の業者が入ってなんらかの作業することが決まっている場合に、次に来る業者の邪魔にならないよう早く自分たちの塗装工事を終わらせて現場を出ることなどを指して使う言葉です。
- ローラー塗装の際に、ローラーの端で起こりがちなムラを消すように塗装すること。単に「ムラを切る」ということもあります。
- 仕事道具のこと。
- 仕事のこと。作業服は「ゴト着」と言います。
- 塗り残し部分。
- 塗料の希釈が濃く粘度の高い状態。
- 塗料が希釈されすぎて薄くなっている状態。
【用例】「これではまだシャブいのでもっとコミよくしよう。」 - 仕上がりが美しい、キレイの意。
- 仕上がりや見栄えが悪いこと。
※「シカツ」と「イタい」は対義語の関係になります。> - 2回塗りのこと。国語辞典の中には【「両個(りゃんこ)」=2個のこと】と説明しているものもあり、れっきとした日本語であるものの現在ではほとんど使われなくなった言葉が、業者の符丁の中に残っているのかもしれません。
【用例】「リャンコを回る」。※下記の「数字に関する隠語・符丁・専門用語」を参照 - 水のこと
- 仕事の休みのこと。特に定休日以外に天候不順で仕事ができない休みを指すことが多いようです。単にできることがなくなったため休みを入れると言う休みは「アケ」と言うこともあります。
- 現場初日のこと。
- 塗料のこと。塗料その他の塗装道具を置く場所のことを「ネタ場」と言います。
- 養生に使う薄手のビニールシートのこと。
- 脚立のこと。「キャタ」や「キャタコー」と言われることもあります。
- 塗装用のミニローラーのこと。
- 目地刷毛(めじばけ)のこと。
- 自転車のこと。自転車は塗装業の仕事道具ではありませんが、現場にはよく自転車が置いてあるので、養生のために自転車を移動させるときには「このグリコーをどかす」などと言います。
- 一斗缶のこと。「一斗」とは18リットルのことで、「一合」の100倍、「一升」の10倍にあたります。
- 給料のこと。給料日を「お湯日」と言うこともあります。また、給料以外のお金に「お湯」と言う符丁が使われることもあります。
【用例】「お湯が出たので遊びに行く」 - 複数業者から同時に見積もりを取り、比較検討した上で発注先を決めること。これはどちらかと言うと施主様にとって重要な言葉で、外壁塗装業界外以外でもよく使われる言葉です。
アイミツが嫌がられる業界もありますが、外壁塗装においてはそんなことはありません。 - 差し引きゼロを意味する言葉で、「損も得もしない」というような状態を指して使われることが多いです。一般的にもよく使われる「トントン」と似ているかもしれません。
これも塗装業に限った符丁ではなく、証券会社や金融機関などでも使われる言葉のようです。 - 給料を前借りすること。
- お酒を飲むこと。「マツ」はお酒を意味し、ウィスキーなどの洋酒のことを「ヨウマツ」、焼酎のことを「イタマツ」と言います。
- トイレのこと。
- ビニール部分の幅が55cmのマスカー(養生テープとビニールシートが一体になったもの)のこと。
マスカーはいくつか種類があり、ビニール部分の幅によって、「300」「1100」「1800」などの数字で呼ばれます。 - 「1」 ホン・ピン
- 「2」 ロ・リャン
- 「3」 ツ
- 「4」 ソ
- 「5」 レ
- 「6」 タ
- 「7」 ヨ
- 「8」 ヤマ
- 「9」 キ
お金に関する塗装業界の隠語・符丁・専門用語
その他の塗装業界の隠語・符丁・専門用語
数字に関する塗装業界の隠語・符丁・専門用語
数字に関する符丁は給料などのお金に関係する会話でよく使われますが、
一回塗りを「ピンコロ」と言ったり、2回塗りを「リャンコ」と言ったりと、塗装作業に関して用いられることもあります。
かなり独特な符丁を使っているようにも思えますが、例えば、一人で活動する芸人さんを「ピン」芸人と言ったり、お金の上前をはねることを「ピンはね」(本来は「1(ピン)割」はねることを指す隠語)と言ったりと一般社会でも使われる言葉も含まれています。