大正時代の建築物、我孫子市の文化施設を塗り替え
今回の事例は、我孫子市の文化施設、杉村楚人冠記念館の塗り替え工事です。
発注者は我孫子市になります。
杉村楚人冠記念館とは…
杉村楚人冠(本名・杉村広太郎)は、明治末期から昭和前期にかけて活躍したジャーナリストです。日本で初めて新聞社(東京朝日新聞)に調査部や記事審査部を設置したり、新聞の縮刷版を企画、発行しました。
明治45年に手賀沼の風景に魅せられて、手賀沼湖畔に別荘を設け、関東大震災の翌年に一家で我孫子へ転居、昭和20年に亡くなるまで我孫子で暮らしました。
杉村楚人冠記念館は、その旧杉村楚人冠邸をそのまま利用し、楚人冠が収集した資料や愛用した調度品、写真などを保管、展示しています。
また、椿の花などが楽しめる庭園もあります。
杉村楚人冠邸は、母屋、茶室、澤の家、蔵の4棟からなっており、平成22年に我孫子市の指定文化財になっています。
母屋は大正13年に建築されたもので、平屋部分は「建築界の黒羊」を自称した建築家、下田菊太郎氏の設計により建てられました。下田氏の設計は、屋根が低すぎて掛け軸がかけられないなど、使い勝手の面で問題があったことから、後年に二階建ての書斎を増築するなど楚人冠が何度も改築をしています。
今回の塗り替え工事は、増築した二階建ての書斎の一階部分の木部の塗り替えを行いました。
杉村楚人冠記念館ご利用案内
- ◆ 所在地:我孫子市緑2-5-5
- ◆ 開館時間:9:00~16:30(入館は16:00まで)
- ◆ 休館日:毎週月曜日(月曜が祝日の場合は直後の平日)/12月29日~1月3日
※資料の整理・保全のため、臨時に休館する場合があります - ◆ 入館料:一般300円/高校生・大学生200円(団体20人以上2割引)/中学生以下無料
- ※白樺文学館、鳥の博物館にも入館できる共通券や、年間パスポート、障がい者の入館料免除などもあります
- ◆ Webサイト
塗装工事の流れ
足場設置 高圧洗浄 ケレン・清掃 下塗り 上塗り
二階建ての二階部分は、ドイツ壁と呼ばれる大正末期に流行した左官職人による塗り壁仕上げなので、塗装は行いませんでした。
木部のケレンと清掃を丁寧に
木部は窓枠や軒天などの白い部分と、黒い横羽目板の部分がありました。
白い部分は、高圧洗浄の後、しっかりと古い塗料部分をケレンして落とします。
古い塗料部分が中途半端に残っていると、新しく上から塗料を塗っても、下の古い塗料が新しい塗料ごと剥がれ落ちてしまうからです。
白い部分の下塗りは『イージーワン』を使用し、上塗りには『一液ファンシリコンセラUV』を使いました。
黒い横羽目板の木部は、高圧洗浄で落としきれなかったコケを清掃します。
キッチン用品としても使われる不織布研磨材のスコッチブライトで木部を傷めないように清掃しました。
塗料は、防腐防虫効果の高い『キシラデコール』を2回塗りしました。